図面・測定の基礎

熱処理の基礎【焼入れ・焼戻し・焼なまし・焼ならしを図解】

2026年7月6日·読了 3分
熱処理(加熱された金属)のイメージ

熱処理は、鋼を加熱・冷却して硬さ・強さ・粘り・削りやすさをコントロールする工程です。同じ材料でも処理次第で性質が大きく変わり、加工順序や寸法(ひずみ)にも影響します。この記事では、4 つの基本熱処理・硬さ(HRC)の目安・表面硬化・加工への影響を図解でまとめます。

4つの基本熱処理

焼入れ・焼戻し・焼なまし・焼ならしの温度と冷却

図1 — 加熱と冷却の違いが性質を決める。

処理 冷却 目的
焼入れ(やきいれ) 約800〜850℃から急冷(油・水) マルテンサイト化で硬くする
焼戻し(やきもどし) 焼入れ後 150〜650℃で再加熱・冷却 **粘り(靭性)**を回復、脆さを取る
焼なまし(やきなまし) 加熱後炉冷でゆっくり 軟化・削りやすく、内部応力除去
焼ならし(やきならし) 加熱後空冷 組織を均一化、機械的性質を整える

焼入れと焼戻しはほぼセット(焼入れっぱなしは脆いため)。この組合せを「調質」と呼ぶこともあります。

硬さ(HRC)の考え方

硬さは主に **HRC(ロックウェル C)**で表します。数字が大きいほど硬く、耐摩耗性が上がる一方、脆く割れやすくなります。

鋼材 用途 焼入れ後の硬さ目安
S45C 機械構造用炭素鋼 焼入れのみ HRC50〜55/焼戻し300℃で HRC35〜45
SK(炭素工具鋼) 刃物・治具 HRC58〜63
SKD11 冷間金型 HRC58〜62
SUJ2 軸受 HRC58〜64

※ 条件で変わる目安。S45C は未処理で HB180〜200 程度です。

表面硬化(芯は粘く、表面だけ硬く)

  • 浸炭(しんたん):低炭素鋼の表面に炭素を入れて焼入れ。表面硬・芯は粘い。歯車など。
  • 窒化(ちっか):表面に窒素を拡散。ひずみが小さく高硬度。
  • 高周波焼入れ:必要部だけ誘導加熱して急冷。局部硬化に向く。

加工順序への影響・ひずみ

  • 焼入れで硬くなると削りにくいため、荒加工→熱処理→研削で仕上げの順が基本。
  • 加熱・急冷で**ひずみ(変形)**が出る。精密部は熱処理後の取り代(研削代)を残す。
  • 硬化後は普通の刃物では削れず、研削や放電加工に切り替える。

よくある間違い

  • 焼入れっぱなしで使い、脆くて割れる(焼戻し必須)。
  • 熱処理後に穴あけ・タップしようとして工具が負ける。
  • ひずみを見込まず、仕上げ寸法で熱処理して狂う。
  • 材料が熱処理に向かない(低炭素鋼は焼きが入りにくい)ことを見落とす。

よくある質問(FAQ)

Q. 焼入れだけではダメ? A. 硬いが脆いので、必ず焼戻しで靭性を戻します。用途に合う硬さは焼戻し温度で調整します。

Q. S45C はどのくらい硬くなる? A. 焼入れのみで HRC50〜55、焼戻し 300℃で HRC35〜45 が目安です。

Q. アルミも焼入れできる? A. 鋼と同じ焼入れは不可。アルミは析出硬化(T6 処理など)で強度を上げます。

Q. 熱処理でどれくらい変形する? A. 形状・材質で異なりますが必ず出ます。精密部は研削代を残して対応します。

Q. 硬い材料はどう加工する? A. 研削・放電加工(ワイヤ/形彫)を使います。切削は難しくなります。

まとめ

熱処理は「加熱と冷却の速さ」で性質を決める工程。焼入れ+焼戻しで硬さと粘りを両立し、焼なまし・焼ならしで削りやすさや組織を整えます。硬化はひずみと加工性に直結するので、荒加工→熱処理→研削仕上げの順とひずみ代を前提に設計しましょう。

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