図面・測定の基礎

機械加工の公差表とは【普通公差・はめあい・IT等級を図解】

2026年7月14日·読了 7分
機械図面と寸法・公差のイメージ

「公差」は、図面で指定した寸法に対して許される寸法のばらつき(最大許容寸法と最小許容寸法の差)のことです。加工現場では、この公差を守れるかどうかが品質・検査・コストのすべてを左右します。厳しすぎれば加工費が跳ね上がり、緩すぎれば組み立たない——ちょうどよい公差を選ぶことが設計と加工の要です。この記事では、公差の用語・普通公差(JIS B 0405)・はめあい・IT等級・加工方法別の精度・図面での読み方までを、計算例とともにまとめます。

公差の基礎用語

  • 基準寸法(呼び寸法):図面に記載された基準となる寸法。
  • 上の許容差 / 下の許容差:基準寸法からのプラス側・マイナス側の許容量。
  • 最大許容寸法 / 最小許容寸法:基準寸法にそれぞれの許容差を加えた上限・下限。
  • 公差:最大許容寸法 −最小許容寸法 = 上の許容差 −(下の許容差)= 許容されるばらつきの幅。
  • 例:φ20 +0.02 / −0.01 → 最大 20.02、最小 19.99、公差 0.03。

公差は必ず「幅(正の値)」で、方向を持ちません。方向を持つのは許容差のほうです。

なぜ公差が必要か(精度とコストの関係)

すべての寸法をぴったり作ることは物理的に不可能で、必ずばらつきが出ます。そこで「どこまでのばらつきなら機能上OKか」を決めるのが公差です。

一般に、公差を半分にすると加工費は大きく増える傾向があります(工程追加・検査強化・不良率上昇のため)。だからこそ、機能に効く寸法だけを厳しく、それ以外は普通公差でまとめるのが実務の基本です。「念のため全部きつく」は最もコストを無駄にするパターンです。

普通公差(JIS B 0405-1991)

個々に公差を指示しない寸法へ一括で適用される許容差です。図面には表題欄や注記に 「JIS B 0405-m」 のように等級(f/m/c/v)を記載します。等級は f=精級、m=中級、c=粗級、v=極粗級で、中級(m)が最も一般的です。

面取り部分を除く長さ寸法の許容差(単位 mm、±)

基準寸法の区分 f 精級 m 中級 c 粗級 v 極粗級
0.5 以上 3 以下 0.05 0.1 0.2 −
3 を超え 6 以下 0.05 0.1 0.3 0.5
6 を超え 30 以下 0.1 0.2 0.5 1.0
30 を超え 120 以下 0.15 0.3 0.8 1.5
120 を超え 400 以下 0.2 0.5 1.2 2.5
400 を超え 1000 以下 0.3 0.8 2.0 4.0
1000 を超え 2000 以下 0.5 1.2 3.0 6.0
2000 を超え 4000 以下 − 2.0 4.0 8.0

※ 0.5mm 未満の基準寸法には、その寸法に続けて許容差を個別に指示します。

面取り部分(かどの丸み・面取り寸法)の許容差(単位 mm、±)

基準寸法の区分 f・m(精・中級) c・v(粗・極粗級)
0.5 以上 3 以下 0.2 0.4
3 を超え 6 以下 0.5 1
6 を超えるもの 1 2

角度寸法の許容差(角度の短い方の辺の長さで区分)

辺の長さの区分 f・m c 粗級 v 極粗級
10 以下 ±1° ±1°30′ ±3°
10 を超え 50 以下 ±30′ ±1° ±2°
50 を超え 120 以下 ±20′ ±30′ ±1°
120 を超え 400 以下 ±10′ ±15′ ±30′
400 を超えるもの ±5′ ±10′ ±20′

はめあい(穴と軸の組み合わせ)

穴と軸の寸法差で「すきま」か「しめしろ」かが決まります。

種類 状態 用途
すきまばめ 必ずすきまがある 滑らかに回る・動く軸
中間ばめ すきま or しめしろ 位置決め・軽圧入
しまりばめ 必ずしめしろ 固定・圧入・回り止め
  • 穴基準(H):穴を H で固定し、軸側の記号で調整する方式。ドリル・リーマで穴径が決まりやすい実務ではこちらが一般的。
  • 軸基準(h):軸を h で固定し、穴側で調整する方式。市販の軸(研磨丸棒等)を使うときに便利。

常用はめあい早見表(穴基準 H7)

組み合わせ 種類 目安・用途
H7 / g6 すきまばめ 軽く滑る。すべり軸受、位置決めピン
H7 / h6 すきまばめ(最小すきま 0) 手で抜き差し、案内
H7 / js6 中間ばめ ガタなく手で組める
H7 / k6 中間ばめ 軽圧入、キー併用の位置決め
H7 / m6 中間ばめ やや強めの圧入
H7 / p6 しまりばめ 圧入固定、抜けない結合

※ 正確な許容差(μm)は寸法区分ごとに JIS B 0401 で規定されます。設計時は必ず数値表で確認してください。

IT基本公差等級(IT等級)

IT01〜IT18 まであり、数字が小さいほど高精度(公差が小さい)。同じ IT 等級でも基準寸法が大きいほど許容差は広くなります。はめあい記号の数字(H7、g6 など)はこの IT 等級を表します。

加工方法別に狙える精度の目安

加工方法 狙える IT 等級(目安) 表面粗さ Ra(目安, μm)
旋盤・フライス(一般) IT9〜IT11 1.6〜6.3
精密旋盤・マシニング IT7〜IT9 0.8〜3.2
リーマ仕上げ IT7〜IT8 0.8〜1.6
研削(円筒・平面) IT5〜IT7 0.2〜0.8
ラップ・超仕上げ IT3〜IT5 0.05〜0.2

※ 機械・工具・材料・条件で変わる目安です。研削前提の公差を旋盤で狙わない、といった工程整合の判断に使います。

図面での公差の読み方

  • ±表記:50±0.1 → 49.9〜50.1。
  • 上下別表記:φ20 +0.02 / 0 → 20.00〜20.02。
  • はめあい記号:φ20 H7 → 穴の公差域クラス H7。φ20 H7/g6 は組み合わせ指定。
  • 公差の指定がない寸法:表題欄の普通公差(JIS B 0405 の等級)が適用される。
  • 幾何公差(真直度・平面度・直角度など)は別記号で、指定がなければ JIS B 0419 の普通幾何公差が適用される。

計算してみよう(実例)

例1:普通公差(中級 m) 基準寸法 45mm、等級 m → 区分「30〜120」で ±0.3。許容範囲は 44.7〜45.3mm。

例2:面取り C2 の面取り、等級 m → 「3〜6」の面取り許容差 ±0.5 → 1.5〜2.5mm ならOK。

例3:はめあいのすきま φ20 H7/g6 を使う場合、穴 H7=20.000〜20.021、軸 g6=19.993〜19.980(JIS B 0401 数値)。最小すきま 0.007、最大すきま 0.041mm → 潤滑して滑らかに回る設計。

よくある間違い

  • 普通公差の存在を忘れ「公差なし=自由」と誤解する。
  • 穴基準(H)と軸基準(h)を取り違える。
  • IT 等級と加工方法が合っていない(研削前提の公差を旋盤で狙う)。
  • 面取りや角度にも普通公差が効くことを見落とす。
  • 機能に不要な箇所まで厳しくしてコストを上げる。

よくある質問(FAQ)

Q. 公差が書いていない寸法はどうする? A. 表題欄で指定された普通公差(JIS B 0405 の等級)が適用されます。等級記載がなければ発注元に確認しましょう。

Q. H7 と g6 の意味は? A. アルファベットが公差域の位置、数字が IT 等級(公差の大きさ)です。大文字は穴、小文字は軸を表します。

Q. 普通公差の等級はどれを選べばよい? A. 一般的な機械部品は中級(m)。外観・非機能部は粗級(c)でコストを抑え、精密部品のみ精級(f)とするのが定石です。

Q. 公差はきつくするほど良い? A. いいえ。厳しくするほど加工費・検査費が増えます。機能に必要な範囲で指定するのが基本です。

Q. ±0.1 と +0.2/0 は同じ? A. 公差幅は 0.2 で同じですが、狙う中心が違います。前者は基準寸法どまん中、後者はプラス側に寄せた設計です。

Q. 一般公差と幾何公差は別物? A. 別です。寸法の普通公差は JIS B 0405、形状・姿勢の普通幾何公差は JIS B 0419 で規定されます。

まとめ

公差は「どこまでのばらつきを許すか」の約束事です。普通公差(JIS B 0405)で全体を押さえ、機能上重要な箇所だけを個別公差やはめあいで指定し、加工方法に見合った等級を選ぶ——これがコストと品質を両立させる基本です。数値は必ず最新の JIS 規格で確認してください。

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